2006年03月07日

超人計画

002-2003 miyako.JPG

宮古島トライアスロン迄、遂に50日を切った。
今年こそ、成果を残したい。
自分の生きている意味を問える様なレースをしたい。
背水の陣、でレースに挑むつもりだ。

昨年の8月末のことだ。
場所は、韓国のチェジュ島。
シーズン最後で、最大のレースだった
アイアンマンコリアを最悪の形で、ぼくは終わることになった。

レースが果てた夜、自己嫌悪の固まりの様なぼくは、
全く偶然にも一人のトラアスリートと、
ロッテホテル近くの食堂で、夕食を共にすることになった。

彼が、ぼくと夕食を共にすることになったのは、
お互い一人だったことと、二人共に、あのレースの参加選手だったからで、
過去に、一面識もあった訳ではない。

「ハワイに行くことなんか、無理だって、痛感しましたよ。」
ぼくは、自分の無力さを吐き捨てるように、彼に言った。
アイアンマンコリアは、トライアスロンにおけるロングレースの最高峰、
アイアンマンハワイの予選大会でもあった。
コリアで無様をさらすことは、世界への夢に足を掛けられないことだ。

「いや、方法はあるんだ。」
彼は静かに、返した。
「チョウジン計画だ。」
「超人計画?」
ぼくは、彼の言葉を繰り返していた。
「俺も、去年迄、そこそこの成績しか残せなかったんだ。
でも、今年は違う。チョウジン計画を実行したから。」

彼は、ぼくよりも2つ年上だが、同じカテゴリの選手で、
そのカテでは、トップの選手だった。
後で分かったことだが、成績はプロアマ含めて10位台で、
アマチュアでは2位だった。
勿論、ぼくの最終目標であるハワイの世界選手権への切符も掴んだ。

「俺は、半年間のチョウジン計画を立てたんだ。」
彼の語るその内容の凄まじさは、ぼくに強い衝撃を与えた。

週末が来ると、彼は山、又山の山道を延々と100キロ以上も走り、
県境を越えて、麓の市街地に到達する。そして、休みも置かず復路に入る。
未明の早朝から、そのトレーニングは開始され、
陽が暮れる頃、200キロ以上も走破し、ようやく彼は家に戻ってくる。
両足は、熱湯でも流し込んだ様に熟れてパンパンの状態だ、そうだ。

が、「それで終わりじゃない。」
彼は、言葉を続ける。
「その後、20キロのランニングだ。」
陽がとっぷり暮れた夜道を、彼は走り続ける。
仮にも、アイアンマンで何度もフィニッシャーになった
ぼくでさえ、「人間じゃない」、と思った。

その手に未来を掴んだ彼と、握った拳の中に空虚さしか残せなかったぼく・・。
違いは、明らかだった。
限界を語る前に、限界を超える努力をした彼と、言い訳だけを探していたぼく・・。
横っ面を殴られた様な気がした。

ぼくは、最高気温37度、
酷暑の2001年アイアンマンジャパンで初めてアイアンマンの
フィニッシャーとなり、人生で初めてと言って良い、素晴らしい充実感を得た。
そして、2003年の宮古島のゴール。
あの日、ぼくは確実にこれまでの自分を超えた感触を掴んだ。
あの時は、これが始まりだと思ったが、実は心の中に満足が芽生えていた。
心の何処かで、「もう、良い。ここで限界だ。」
そう囁く自分が、造られていた。

その夜、ロッテホテルのベッドの中で、ぼくの中で何かが、
音を立てて壊れ、そして生まれた。
「俺も、超人計画をやろう。」
限界を超えた練習をするんだ。
そして、今までの自分と一線を引くんだ。
この手に未来を掴む為に・・。

彼に再び出会ったのは、翌々日。
プザン空港での乗り換え待ちの時だった。
「俺も、超人計画やりますよ。」
ぼくが、言うと彼は、手を振って、
「長期計画だよ。長期計画!」
と笑った。
ぼくの聴き間違いだった。

でも、あの夜は「チョウジン計画」にしかきこえなかったんだ。
彼は、言っていた。
「最初から、俺もそんな練習が出来た訳じゃない。
その練習をするための身体造りから、始めた。
それに、週末、そのトレーニングをした後は、月・火・水と完全に休養だ。
週末二日、その練習をすることもあれば、一日はランニングだけの時もある。」
 
ぼくは、成田に向う飛行機の中で一人、納得していた。
聞き間違えた訳じゃない。長期計画=超人計画なんだ。
メリハリをつけながら、平凡な一日・一日を目標を忘れず、懸命に生きること。
その積み重ねが、常人を超える唯一の道だ。



posted by まき88ま at 16:14| 東京 曇り| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めまして。
突然すみませんが、トラックバックさせて頂きました。

宮古島頑張って下さい。
Posted by Sakurai at 2006年03月17日 11:29
TB、ありがとうございます。
アイアンマンジャパンでの健闘を、
お祈りしています。
ぼくも、宮古島がんばります!
Posted by まき88ま at 2006年03月17日 14:04
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